おすすめ詩集

このページでは、私、笠原仙一が、手元にある最近出版された詩集の中で
芸術性的にも、不易性的にも、感性的・思想的 にもすばらしいと思われる詩集だけを自由気ままに、且つ斬新に、 リベラル的立場に立って簡単に紹介するページです
◎大田という町 ◎交通博物館 ◎過疎村余聞
◎蝗軍 ◎小樽原人 ◎日日の想い ◎地球B
福中 都生子詩集

大田という町

1987年6月初版 ひまわり書房 2000円 大阪市在住 1928年生まれ

この詩集は福中都生子さんの詩集の中で一番美しく且つ思いが
芸術的に述べられた深い信念と心と祈りが入っいる詩集である。
特に、「大田川」という詩の美しさ、願いは彼女の澄んだ心、願いを感じて涙が流れてくる。
川よお前は見てきたか/あの戦争を見てきたか/
人間の哀れとおぞましさ/私が生きた時間だけ/
川よ、お前も見てきたか/大田という町に行ったら/
人よ、私の名前を忘れても/一声大きく呼んでくれ/
大田川よ/お前はまだ清く流れているか/
この呼びかけに私は涙する。彼女は三歳から十歳までの幼少年期を韓国で過ごした。その時の思いを4 0余年の間心に問いして、とうとう書いたのがこの詩集である。皆様の一読を請う。
樋野 修詩集

交通博物館

2002年7月 初版発行 詩人会議出版 1500円 弘前市出身 1959年生まれ

私が、中堅の詩人の中で一番すばらしい詩人4人の中の一人として推薦するのが彼女である。彼女はカ メラマンである。いや、この詩集に限り私は彼女をカメラマンだと信じる。何故なら、私は、彼女のこ とをほとんど知らないからである。でも、私は、この詩集をいただいて本当に感動した。自分の職業か ら得た思想が詩の個性表現となって表現されている。これは誰もまねることのできない樋野修の世界で ある。特に、この詩集の第1章が僕は好きである。
その中でも、ROSSO の詩における宮﨑駿の紅の豚にでてくる飛行機乗り野郎のようなニヒルな語りが 好きだ。また、「花を待つ」の詩は、カメラマンとして、一般的な美しく咲く花を撮りたい等という風 情的な思いをかなぐり捨てた、40才という作者の「非情なまでの意志の鋼鉄。凝視する空から見えて くるのは分刻みで亀裂を広げていく世界」「写真撮影 それは 人間のなし得る手法のうちでもっとも 冷徹で残酷な意思表示の方法だ」 「僕はもう 花を待たない もう 花を詩わない」 というカメラマ ンから得た詩の視点は、誰にも真似できないすばらしい世界となって表現されていることに感動した。
小日向みちぞう詩集

過疎村余聞

2000年11月 初版発行 詩人会議出版 2300円 新潟県出身 1919年生まれ

私が、今までに田んぼや畑で生きる人々の思いをテーマにした詩集の中で、一番感動した詩集の一つと して、この詩集を紹介する。正直、宮澤賢治の現代版であると思えるほど、童話性にもとみ、方言の使 い方もおもしろく、こんなにすばらしい作品は珍しい。そして、百姓として生きる様々な思い、反骨の 精神、苦労、人生、自然、それらが、時にはデクノボーになったり時には、祈りになったり、苦しみや 嘆きになったり、実に様々に表現されている。私は、この詩集を読んで、本当に、百姓として生きてき た小日向氏の生きざま、そして、日本の農業を根底で支え、そして、八十歳以上にもなりながら詩を書き、 過疎の村で日本を憂え、未来を心配する、本当の詩人の姿・人間の姿を見て、感動する。こんな詩集が、 2000年の日本に現れたことが感動する。この詩集は、絶対に、多くの人に読んでいただきたい詩集 として皆様に紹介をする次第である。
池田錬二詩集

蝗軍

1989年5月 初版発行 露滴山房 750円 長野県出身 1919年生まれ

こんな衝撃を受けた詩集は初めてであった。この詩集は、大日本帝国軍、天皇の軍隊の実体を詩でさら した詩集である。「中国では天皇の軍隊=皇軍を蝗軍と書いた」で始まるこの詩集は、それはそれは恐 ろしいものである。これが、日本軍の実体であり、天皇軍の真実である。濱口国雄の詩にもすごい作品 があるが、戦争とは、軍隊とは人間を鬼畜にしてしまうこの恐ろしい事実に、ふるえを生じさせる。ア ウシュビッツもそうであった。すべてそうであった。戦争は、鬼畜、人殺し、である。どのような正義も、 実は正義でないのである。この詩集を読むと、何故、戦争をしたくなるのか、小林よしのりや石原慎太 郎が、小泉首相が何故戦争を美化しようとするのかそれが不思議でならない。有事法制などと言った戦 争のための準備を喜々としてしようとするのか不思議でならなくなる。また、彼らにだまされて、日本 国憲法を変えようなどと言う人々の心がいかに鬼畜と化しつつあるかが見えてくる。どうぞ、反戦詩の 決定版ともいえる詩集、この詩集を読まずして、戦後の平和のすばらしさが語れないほどの詩集どうぞ お読み下さい。もう、5000部以上広まっているとのこと、どうぞ皆様、今の時代だからこそ一読を。
大原登志男詩集

小樽原人

2001年1月 初版発行 私家版 1000円 北海道出身 1922年生まれ

手づくり詩集と書いてあるが、実に斬新ユニークすばらしい内容の詩集である。何がすばらしいかとい うと、この「かたり」である。私の詩集とは違う、本当の吟遊詩人としての語り、リズム、方言、聞か せる読ませるかたりである。こんなに方言が、かたりの口調が詩の中に入っていてリズムになっていて、 人の心にうつものは珍しい。そして、生きざまそのまんまの内容がいい。反戦、平和を願う小樽原人の 生活・思いそのままで、小樽を愛し、小樽を憂え、戦争の話をし、小林多喜二を語り、日本を憂え、叱咤し、 その語りは実に明るくおもしろい。これが、庶民だ、人間だ、人生必死に生きてきた人の思いだ、願いだ、 これこそこれからの詩人だと感動してこの紹介コーナーに載せる。 この詩集は、人間に対する信頼・暖かみ・希望を感じさせるおすすめ詩集である。 この表紙に出てくる顔がまたいい。
五十嵐顕詩集

日日の想い

1989年5月 初版発行 しんふくい出版 1500円 福井県出身 1916年~1998年頃

この詩集は自家版で、もう絶版であろうと思われる。五十嵐先生は、最近亡くなられたので再版はない であろうと思われる。しかし、この詩集は、戦後民主主義を誠実に求め、民主教育に命をかけてきた先 生の人生や人柄、そして平和への願い思いが本当によく分かる、しみじみとしたすばらしい詩集である。 掲載されている詩は、1975年~バブル絶頂期の1989年頃までの詩である。この時代は、多くの詩人もバブルに踊り、誠実な詩を書いている詩人は少なかった。彼は、そのような時代の中で、一人の良心的な学者として、社会を真摯に見つめ自分を見つめ、自分の思いをやさしく美しい言葉で、詩の世界を表現している。本当に人間に対する信頼・良心を感じさせる、しみじみとした良い詩集である。このような詩集が、戦後平和憲法の中で育った本当に遺産として位置づけられる詩集だと私は思っている。是非、皆様の一読を願う。
ナナオサカキ詩集

地球B

1989年11月 初版発行 スタジオ・リーフ 1200円

放浪の地球人、自然人、自由人、年齢70歳は過ぎている

彼の生活やプライベートなことは詳しくは知りません。しかし、世界中を旅していたり、世界を股にかけて生活していたことは確かである。こんな詩人が、日本にいるなんて感動。そして、私のように、けっこう詩を愛して読んできた人間でも知らないのに、世界的にはよく知られているという不思議な詩人である。このような詩人を紹介しない日本のマスコミの体質、詩人たちの世界のいびつさを考えさせられてしまうような詩人である。
内容は、ギンズバーグのような独特な、リズム、ビートの利いた詩、自由な言葉、深い文明批評・思想、人間愛に満ちている。また、発想や詩のスタイルが常道を超えている。宇宙的で、踊っているようだ。原発にも、深い洞察と批判的な思いを自由に表現しいる。そこには、硬直な言葉、政治詩的な言葉が一つもありません。また、独創的で、ピカソのようなところもあり、私の範としたい詩人の一人である。自然とともに、魂の自由を大切にし、既成の枠にとらわれない新しい詩人。地球を思い、地球に抱かれて生活することの大切さが染みて感じられる詩集である。どうぞ皆様の必読を願う。
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