武生慕情

昔は
お祭りになると
お総社の鳥居の空には
澄んだ三日月が物語のように引っかかっていました

お面が並び
金魚すくいや
カステーラの小さな夢も裸電球となって輝き

子ども達の瞳は
親と一緒に蝶のように止まり歩いていましたし
大人も
いつまでもこんな幸せが続くようにと
手を合わせて踊っていました

   賑やかな町中は
   国府の夢の中で酔っぱらい
家持や紫式部の眺めた日野の山も
   越前富士と讃えられ
粋な町衆も
   職人も
華やかな時代を羽織っていました

でも今は、千三百年の繁栄は見る影もなく
町は悲しいほどにさびれ
町の名前も消え去り
もう 静かな
町並みとお花と空き地だけになってしまいました 
 
それでも
僕がいて
君がいて
潰れまいと意地だけで店を開いているおばさんや
何とか個性をと独自のブランドを開拓している店や
みんなのために動いてくれるお寺のご住職など
みんなみんな負けずに元気で頑張っています

今にきっと
新しい背の丈にあった
落ち着いた町ができるでしょう
そう夢見るのです

笠原仙一 詩の世界
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