武生の朝

僕の朝は仕事拒否児の時計のようなものだ

眼がさめても 頭の中は夜の茶色いカタツムリ
それでも思考という長針があるから
カタツムリのままベッドの上でグルグル
「今日一日
布団の中でずる休みしていても なあ 
十時ごろには体はうだるし 寝ているよりは
起きたら 何か良いことがあるかもしれん」などと
今日の一日を一回りして

そう 大好きな
朝のコーヒーと リンゴも待っている 
針がたどり着くと
ロボットのように手足が伸びはじめ
豆を挽きはじめる

香ばしいコーヒーの香り
パンの焼ける匂い 

自然に触覚が立ち始め
次第に眼が醒めて 首が動き始める

ちょうどその頃 
決まったように 七時の大寶寺の鐘の音が
四百年の歴史のままに静かに打ち寄せてきて

働けよー
今日も始まったぞー
と 

すると僕の一日は 昔の職人と同じように
真面目に カタコト
カタコト トントン と動き始める

やっぱりココは武生の町なのです
(詩集・・・「明日のまほろば」より)

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