八ッ杉 千年の森

幟(のぼり)たなびく村から
祭ばやしが聞こえてくる

八ッ杉の千年の森の奥の
鳥居の前の小さな広場のお空に
澄んだ十五夜のお月様が光っている

夜露に照らされた草むらからは
秋の虫たちの声

広場には
狸の親子が月を見ながら
会話をしている

お母さん
人間様は 狸がお月様に向かって腹鼓を打っていると 
今も思っているのだろうか

さあ
きっと思っていないですよ 忙しくって
人間様は 今世界中で 
この美しいお月様を何人見ているんでしょうねぇ
もうこんなに美しいお月さまのことも忘れてしまっているくらいだから
私たちのことなんかすっかり忘れてしまっていますよ

ほんとに
ええ

さびしいね
ええ さびしいね

腹鼓してみようか
ええ 一緒にしましょうね
うん

ポンポコポン
ポンポコポン
八ッ杉の千年の森の奥から
ポンポコポン
ポンポコポン

美しいお月さま 笑っている
(詩集・・・「天涯の郷」より)

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